創業110年(1913年~)の超老舗のパン屋さん、京都で最古のカフェと言われています
現在ではカフェやベーカリレストランを京都市内に12店舗展開しているそうです、京都から一歩も出ていないところが京都のお店らしいところです
もともとは製パン業もしていたみたいですが、製パン業は2002年に大手に売却して撤退しています
私が進々堂と出会ったのは22歳の時、1981年、42年前ですね
10代のころから珈琲が好きでコロンビア(豆)と喫茶店をこよなく愛していた私は、就職して京都の事業所に配属になり京都に住むようになってからも京都市内を歩き回って喫茶店を巡っていました
ほどなくしてリピートする店がいくつか出来ました
そのなかの一つが、百万遍にある進々堂本店(今は京大北門前店)でした
2023年7月の現在でも当時の趣(おもむき)そのままに営業を続けています
百万遍の交差点と京大農学部の門との間ぐらい、今出川通り沿いに進々堂はありました
初めて入店したのは京都に来てひと月ほどたった5月連休の晴れた日でした
当時はスマホもWebsiteも無かった時代ですので「ぴあ」などの情報誌が情報源でした
関西では「Lマガジン」がメジャーな情報誌でしたが、そのエルマガジンの「進々堂はとにかくクロワッサンが美味しい!!」という記事を読んで早速週末に行ってみることにしました
当日は、ワクワクしながらWalkmanでカセットテープの音楽を聴きながら進々堂本店を目指して歩いたのでした
たどり着いたそのカフェは、小さいながらまさに西洋建築のとても趣のある建物で、間口は7-8mですがその存在感に圧倒されました
店内は思いのほか奥行きがあって広いのですが、私は今出川通りが見える窓側の席を選んで、ホットコーヒーとクロワッサンを頂きながらぼんやりと外を眺めたり他のお客さんを観察していました、当時はもちろんスマホがなかったし、他の人も読書したりぼんやりと考え事をしたり友達との会話を楽しんでいましたね
当時、学生運動が下火になった頃で、先細りしながらも京大にはその名残りが結構色濃く残っていました、学生運動活動家達が大きなテーブルに陣取って議論していたり、マルクスの著書を読んでいる学生さんがいたり、その横では若い学生のカップルが楽しそうにじゃれあっていたり、今思うと結構カオスな場所だったと思います
そして、私を含めてほぼ全員が煙草を吸っていました
それ以来、結婚するまでの4年間、土日のどちらかの朝は必ず進々堂でモーニングを食すという生活が続きました
彼女が出来て一緒にモーニングを食べ、その彼女と結婚して二人でクロワッサンを食べ、子供たちと一緒にカレーを食べ、なんだかんだとお気に入りのお店でしたが、滋賀県に引っ越した頃からは足が遠のいてしまっていました
あれから42年後
京都に戻ってきた私は、毎月一回、妻と私の二人の"父親"の墓参りをした帰りに、進々堂本店(寺町店)でモーニングを頂いています、クルマではなくて自転車で行っています
寺町店でも、できるだけ窓際の席に座って寺町通を眺めながらボーッ考えごとをしています
進々堂には人をボーっとさせる何かがあるのかもしれません
京大北門前店にも一年に一回ぐらいのペースで珈琲を飲みに行っています
今、寺町店で隣に座っている妻は、42年前には、恋人として京大のお店で珈琲を飲んでいました
進々堂の中で働く人たちはもちろん入れ替わっていると思いますが、メニューや建物や調度品は42年前と同じものが残っているものが多いと聞きます
パンの味は変わっているのでしょうか、正直それは自分ではよくわかりませんが、クロワッサンはどこか懐かしい味と香りがします
激しく移り変わる世の中ですが、時がたっても変わらずにそこに存在し続けるものがあって、長い間忘れていたけど、またふとそれと再会を果たした時、言いようのないホッとする感情が沸き起こるのでしょう
「中の人は変われどずっと存在し続けるモノ」
京都にはそういうモノが多い気がします